明日への読書録
浜山典之
 

全12件 <更新> ページ移動 ⇒ [ ↓ ホーム]

PAGE 1 (1〜10)


『日本を知る101章』について
   2025/11/21 (金) 18:09 by 浜山典之 No.20251121180915

『日本を知る101章』(平凡社、1995年)は、刊行当時の日本を代表する37名の文化人や知識人によって執筆された101のテーマのエッセイを集め、それぞれに写真と英訳を付けて編まれた本です。この本の冒頭に掲げられた文の末尾近くに、「いま、あらためて問うてみよう。日本とは何か、と。」と書かれているように、日本とは何かという問題意識のもとに、それぞれの執筆者が自らの関心や専門分野に基づく視点で濃密な文章を綴っています。日本の文化や歴史の奥深いところにある本質的なものをつかみ出し、あるいは日本が抱える問題点について鋭く掘り下げている内容には、ずっしりとした読み応えが感じられます。


『仏像礼讃』について
   2025/11/18 (火) 18:21 by 浜山典之 No.20251118182140

 薮内佐斗司『仏像礼讃』(ビジュアル大和文庫、2015年)は、仏像とはどんなものかを知るには手ごろな入門書となっています。まず導入部分において、仏像の名前、分類や編成など、仏像鑑賞のための基礎知識が図入りで分かりやすく解説され、「仏師系図」もあります。また、序章では初期の仏教の歴史について簡潔な説明があり、仏教の成り立ちや発展の過程などの要点を手早く知ることができます。そして、第1章から第8章までの本文には時代別に90件に及ぶ我が国の代表的な仏像のカラー写真が掲載され、そのそれぞれに対して味わい深い解説文が添えられています。


『失われゆく我々の内なる地図』について
   2025/11/7 (金) 17:41 by 浜山典之 No.20251107174133

 マイケル・ボンド 著、竹内和世 訳『失われゆく我々の内なる地図 空間認知の隠れた役割』(白揚社、2022年)は、場所の記憶やナビゲーション能力といった人間の生存に不可欠の空間的技能の持つ意味や重要性を総合的に解明することを目的として書かれています。この本では、数多くの事例や実験を通して、人間の進化の過程をも含めた様々な観点から空間認知の核心部分に迫っています。人間の方向感覚がどのように養われ、またどのようにすればそれを強化できるかという点についての示唆などは実生活でも参考になるものです。


『俳句的生活』について
   2021/10/1 (金) 18:13 by 浜山典之 No.20211001181335

 長谷川櫂『俳句的生活』(中公新書、2004年)は、俳句を軸として、さまざまな切り口から多彩な論を展開しています。
 この本の著者は俳句というものをどのように捉えているのかといえば、それは次の個所から読み取れると思います。

  つまり韻文とは無意味なものでありナンセンスなものであっ
  て、本来、社会生活にとって何の役にも立たない。(中略)
  俳句は韻文の中で最も短いことから容易に想像できるように
  極端な韻文であって、言葉の意味を最小限に抑えて、その代
  わりに言葉の風味を最大限に生かそうとする形式である。
  (中略)人間が生活している世間は理屈でできているから、
  誰でもふだんは理屈の中にどっぷりと浸かって生活している。
  (中略)初めて俳句を詠もうとする人がなかなかうまく詠め
  ないのはこの世間の理屈から抜け出すことができないからで
  ある。(同書、p.37)

 ちなみに、上の引用文中にある「言葉の風味」というのは、「言葉の意味」の対立概念として著者が繰り返し用いているこの本のキーフレーズです。
 ところで、俳句を詠むことによって人生が変わる可能性について、著者は次のように述べています。

  人間は誰しも自分自身に縛られて生きているのであるが、
  俳句には十七音という制約があるために俳句を詠む人は自
  分を縛る自分を捨てなければならない。(改行)俳句とい
  う形式のこの特徴が俳句を詠む人の生き方に影響を及ぼす
  ことがある。(同書、p.106)

 この本にはほかにも注目すべき点がいろいろとありますが、特に一つ挙げるとすれば、次の個所です。

  明治維新以来、日本は近代化という名のもとに西洋文明を
  迎え入れる一方で、日本古来の土着文化を恥として滅ぼし
  続けてきた。その結果、私の身のまわりを探してみても日
  本固有の文化はほとんど残されていない。しいてあげれば
  日本語しかない。(同書、p.215)

 ここまで言い切ってよいかどうかは、人によって意見の分かれるところだろうと思います。


『物語 オーストリアの歴史』について
   2021/7/3 (土) 18:52 by 浜山典之 No.20210703185230

 山之内克子『物語 オーストリアの歴史』(中公新書、2019年)は、オーストリアを構成している九つの州に対して、それぞれに一つずつ章を設け、オーストリアの歴史を州別に解説しています。ヨーロッパ中央部の山岳地帯にあるオーストリアは、北海道とほぼ同じくらいの面積の小さな国ではありますが、自然環境も、人々の生活習慣も、歴史的な発展も、地域ごとに驚くほどバラエティーに富んでいることが、この本を読むとよくわかります。


『敦煌物語』について
   2021/7/3 (土) 14:52 by 浜山典之 No.20210703145238

 松岡譲『敦煌物語』(講談社学術文庫)は、中国西部のシルクロードにある敦煌(とんこう)を舞台にした小説です。その敦煌にあるのが千仏洞(せんぶつどう)で、現在の呼び名は「莫高窟」(ばっこうくつ)ですが、そこには何百年もの間、人知れず封印されていた大量の写経や文物があり、それが1900年に偶然に発見されました。するとそれを目当てに、いくつかのシルクロード探検隊が20世紀の初頭に次々に敦煌を訪れ、千仏洞を管理していた住持(住職)を言葉巧みに籠絡(ろうらく)し、それらの貴重な写経や文物の大半を驚くほどの安値で買い叩いて持ち去ってしまいました。その経緯をこの小説は描いています。ただ、大筋では史実を踏まえつつも、住持と探検隊との間のやり取りなどは著者の推測によるところが大きく、あくまでもフィクションとしての読み物です。


『以下、無用のことながら』について
   2021/4/26 (月) 19:46 by 浜山典之 No.20210426194659

 司馬遼太郎『以下、無用のことながら』(文春文庫、2004年)は、さまざまな紙誌などに掲載された司馬遼太郎の数多くの文章を蒐集して編纂されたもので、その中には随筆、紀行文、講演録、さらには知友の著書への序文や跋文(ばつぶん)ばかりか、弔辞までも含まれています。また、紙誌への掲載当初は関西方面に住んでいる人の目にしか触れることがなかったような文章も、この蒐集の中に見ることができます。おかげで、他の小説や随筆、対談集、講演集などでは知ることができないような、著者自身の経験や考え方や交友の広がりなどを垣間見ることができます。


『祖国とは国語』について
   2021/4/18 (日) 17:32 by 浜山典之 No.20210418173256

 藤原正彦『祖国とは国語』(新潮文庫、2006年)は、大きく分けて三つの部分から構成されていて、一番目が「国語教育絶対論」、二番目が冗談や洒落交じりの随筆を集めた「いじわるにも程がある」、そして最後が「満州再訪記」です。これらのうち、この本の題名に直接関係があるのは、一番目の「国語教育絶対論」だけです。ここで著者が主張していることは、次の個所に最も端的に集約されていると思います。

  母国語はすべての知的活動の基礎であり、これが確立されて
  いないと思考の基盤が得られず、内容の空疎な人間にしかな
  れない。(同書、p.40)


『花伝書(風姿花伝)』について
   2021/3/20 (土) 18:26 by 浜山典之 No.20210320182624

 世阿弥 編|川瀬一馬 校注・現代語訳『花伝書(風姿花伝)』(講談社文庫)は、およそ600年前に世阿弥が父親の観阿弥が語る教えを聞き書きした『風姿花伝』をもとに、川瀬一馬博士による読みやすい現代語訳と懇切丁寧な解説が添えられて編集された本です。ここには、長年にわたる精進と工夫の末に会得した猿楽の芸の心構えや考え方などが記されており、単に舞台芸術関係者だけではなく、広く表現活動に携わる者にとって参考になるような内容だと思います。


『応仁の乱』について
   2020/6/28 (日) 14:32 by 浜山典之 No.20200628143259

 呉座勇一『応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱』(中公新書、2016年)は、奈良にある興福寺の二人の僧侶が残した日記を主な史料として駆使して、応仁の乱の歴史的背景、当時者たちの人間関係や行動の動機などを分析し、妥当性の高い推量を重ねることによって、応仁の乱の複雑な実像を浮かび上がらせています。
 応仁の乱は京都の市街を焼け野原にし、さらに全国に広まって約11年もの間続くことになった大乱ですが、その後の歴史の中で、応仁の乱の勃発の原因は日野富子にあると長い間考えられてきました。しかし、実際の経緯はまるで違うことが、この本の中で明らかにされています。従来の誤った歴史認識を形成するもとになったのは『応仁記』に書かれている記述内容だと、この本の著者は指摘しています。


ページ移動 ⇒ [ ↑ ホーム] <照会>
 
浜山典之『明日への読書録』(げんとも文芸館)
 Copyright © Noriyuki Hamayama
MiniBBS-C